コアシェル型BNF–SQモノリスゲル

要点

  • 市販のベーマイト(AlOOH)ナノファイバー分散液にケイ素アルコキシドを混合・攪拌するだけで白色のモノリス型多孔体を形成。
  • BNFをSQが被覆したコアシェル型棒状骨格(数十nm径)と数百nmの細孔からなる微細構造。
  • 一軸圧縮に対して柔軟性(弾性)をもち、蒸発乾燥も可能。

coreshellgel

コアシェル型ゲルについて

低密度のモノリス型多孔体を作製するためにさまざまな研究が行われています。ベーマイトナノファイバー(AlOOH組成、BNF)を分散させた酢酸水溶液にメチルトリメトキシシラン(MTMS)など3官能ケイ素アルコキシドを加えるだけで、シルセスキオキサン組成のモノリス型(塊状)多孔体を形成できることがわかりました。

BNF-PMSQ_TEMこれまでモノリス型多孔体の作製には、界面活性剤やポリマーなど添加剤を用いて相分離を制御する方法が多くとられていました。これら添加剤はゲル化後に不要となるため洗浄・除去する必要があり、大きなモノリスになればなるほど手間を要するプロセスになります。BNF-ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)ゲル形成過程においては、BNF表面をPMSQが被覆すると同時に骨格同士が接着し、BNFを内包したシルセスキオキサン骨格をもつ多孔体ができます。この過程には分散剤や相分離誘起剤などの添加が不要です。ゲル化後に表面修飾処理を行うわけではなく1段階で反応が終了します。通常、PMSQ組成をもつ多孔体を作製するためには酸・塩基2段階反応が必要ですが、この方法では酸触媒のみで構造が形成されます。

BNFエアロゲルの光学特性からもわかる通り、BNFはゲル化時まで高い液中分散性を保つと考えられます。今のところ定量化はできませんが、このコアシェル型ゲルも骨格が空間内によく分散した構造をもっているはずです。コアとなるBNFの量を増やすことによって骨格の割合を増やせば細孔径が小さく、シェルとなるPMSQの量を増やすことによって骨格径を太くするなど、微細構造制御が可能です。MTMS以外のケイ素アルコキシドを出発組成に用いることで、PMSQ以外のシルセスキオキサンをシェルにすることも可能です。このゲルは一軸圧縮に対して柔軟性をもつため、ある程度の構造を保ったまま蒸発乾燥させることができます。

PMSQ-BNF_ed

応用としては断熱用途が考えられます。熱伝導率測定を行ったところ、大気圧で30 mW m−1 K−1の値となりました。市販の高性能断熱材に比べて特段よいものではありませんが耐候性の改善が期待できます。また、低真空中では約12 mW m−1 K−1に下がることがわかりました。シリカエアロゲル同等の値であり、簡易な真空断熱材や軽量を生かした特殊用途に可能性があります。

BNF–PMSQゲル作製は市販のBNF分散液とMTMSを混ぜ合わせるだけで作製可能なため、誰にでも再現可能です。ナノファイバー自身を構造制御に用いた多孔体作製法はほとんど報告されておらず、異なるナノファイバーとポリマーの組み合わせがもし見つかれば可能性はさらに広がります。

論文

  • Gen Hayase, Kazuya Nonomura, Kazuyoshi Kanamori, Ayaka Maeno, Hironori Kaji and Kazuki Nakanishi, “Boehmite Nanofiber–Polymethylsilsesquioxane Core–Shell Porous Monoliths for a Thermal Insulator under Low Vacuum Conditions”, Chem. Mater., 28, 10, 3237–3240 (2016).
    doi:10.1021/acs.chemmater.6b01010

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